教科書における分数のかけ算の導入

学校公開で観た算数の授業
(習熟度別学習/分数のかけ算・わり算)
をもとに考えたことを書いている。

1.2つの気持ち/習熟度別学習における分数の授業を観て
2.算数の問題のリアリティってなんだろう?
3.かけ算・わり算の文章問題における「1」の存在感
4.『「分数のかけ算・わり算」がペンキを塗る話になるわけ』
というテキストのこと




5.教科書における分数のかけ算の導入

娘の学校(が属する自治体)は、
学校図書の算数の教科書を採択しており、
「分数のかけ算」の学習は、
まさにペンキぬりから始まる。
(小6算数上/学校図書/平成25年発行/p.34)

「へいに緑のペンキをぬります。
 このペンキは1dLあたり4/5m^2ぬれます。
 このペンキ□dLでは,何m^2ぬれるでしょうか。」

という文章と、何匹かのブタを囲う木製の塀に
男の子がペンキを塗っている挿絵が示されている。

塀は1m^2くらいの大きさの面を
柱でつなげた構造になっており、
1つの面には5枚の板が張られていて、
男の子はちょうど4枚めを
ぬり終わろうとしているところ。
また、男の子はペンキの缶を持っている。

  …って、すごくわかりにくいですね(^^;
  強い興味をお持ちのお方は、
  教科書センター等で確認してみてください。

そんなこんなで挿絵では、
問題にリアリティをもたせるために、
苦心した様子がみてとれる。

この問題をいったいどう考えていくのかは、
続く数ページに書かれてあるのだが、
まずこの段階でわかることは、
分数のかけ算は文章問題で導入されるということ。

つまり、
1dLで4/5m^2のへいをぬれるペンキがあり、
このペンキ1/3dLでは何m^2のへいをぬれるのか、
という文章問題をもとにして、
「4/5 × 1/3」という分数のかけ算の仕組みを
学んでいくことになる。

さらに、これは4でリンクしたテキストの
内容に関わることなのだけれど、
「4/5」も「1/3」も単位のついた数値として示されている。
「4/5m^2」「1/3dL」というふうに。

これが量分数といわれるものであり、
遠山啓らが主張した分数の学び方である。

それ以外にどういう分数があるかというと、
たとえば全体の4/5、何かの1/3というふうに、
単位のつかない割合としての分数がある。

遠山啓らは、この割合分数は、
2つの数値の関係としての分数であり、
計算をするときに難しくなるので、
1つの量としての分数、
すなわち量分数として考えさせたほうがよい、
と主張したのだった。

私は、遠山啓の根本思想に深く共感している者だけれど、
このたび小6の授業を観て、
分数のかけ算・わり算の段階まできたら、
割合分数で分数を学んだほうがいいのではないか、
と感じた。

初めてそう感じたというより、
その思いを強くした。

というのも、上記のページにも出てくる
数値の対応表や二重数直線は
教科書で多用されており、
それは「倍」の発想に近いと思うのだ。

また、web上で見つけた授業実践例および
その考察を読んだりしたときにも、
「倍」の発想の強さを感じることがある。

そして何よりも、小学校の比例は、
一方を2倍、3倍、・・・にしたら、
もう一方も2倍、3倍、・・・になる、
というふうに、倍をもとに定義している。
(中学校では定義が異なる)

1m^2に何をかけたら、2/3m^2になりますか?
という問いは、結局、
1m^2を何倍したら2/3m^2になりますか?
ときいているようなものではなかろうか。

これはもうほとんど、
割合としての倍の発想ではなかろうか。

しかし教科書では、「かけ算」と「倍」を、
微妙に区別している。

かけ算は小2の頃から
「1あたり量×いくつ分」
という概念で定義されており、
こう定義した上で、
「倍」もかけ算の式に表せることを示す。

整数倍はともかく、
小数倍、分数倍は確かに難しいと思うので、
小学校低学年のころは、
「1あたり量×いくつ分」のほうが
好ましいのかもしれない。
 [追記](あとから気がついたこと)

しかし、百分率などの割合も学ぶ
小学校高学年においては、
むしろ倍としての分数のほうが
とらえやすいのではなかろうか。
(というか、分数って、本来そういうものかも?)

そうなると、かけ算の定義を
途中で変えなくてはならなくなる。

定義を途中で変えるということは、
数学では考えられないことだけれど、
実際に割合のところで
「くらべられる量=もとにする量×割合」
という式を出しているのだから、
かけ算の定義を言葉で1本に絞ろうというのは、
無理な話だ。

また、そもそも、文章問題を式で表現するときの決まりは
数学の定義なのだろうか?という素朴な疑問が、
私のなかでずっと渦巻いている。

とにもかくにも、
「分数のかけ算の仕組み」、その計算のしかたを
学ぶことが目的なのだったら、
扱う文章問題はどんなものでもよい、ということになる。

そんなこんなで、
「倍」としてのかけ算、「割合」としての分数で
小学校高学年の算数を構成するという道も、
あるかもしれないなぁ、と思うきょうこのごろ。

ちなみに、「割合」は小5で学ぶのだが、
百分率や歩合を学ぶのが目的になっているので、
ここで表される割合は小数になる。

逆に、この段階では、
「分数×整数」はやっていても、
「整数×分数」や「分数×分数」はやっていないので、
分数で示された割合は扱えない、ともいえる。

もちろん、順序を固定した話。

おそらく、割合をメインとして分数のかけ算を学ぶと、
かけ算の順序の固定化はいまよりさらに促進され、
一般的受容度も増すのではなかろうか。
(もちろん、固定する根拠にはならないのだが)

逆に、「かけ算の順序」固定を“積極的に”排除したい場合、
「分数×整数」と「整数×分数」を区別するのは
ナンセンスということになり、
教科書の内容を抜本的に変える必要があるかもしれない。
(200gの3倍と、3gの200倍は、
あくまでも区別するという考えかたのもと、
順序にこだわらない道もあるかもしれない。)


(つづく)



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